7つの光の方へ

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「幽霊はここにいる」感想雑記

「幽霊はここにいる」完走おめでとうございます!

東京・大阪あわせて全34公演無事に終演まで迎えられたこと、本当に素晴らしいことだと思います。

キャストスタッフ関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。

 

私は1/14のソワレ公演に伺って来ました。

とっても面白くて、観劇後直ぐに感想をメモった。

まとめることを放棄した私のダラダラ雑記を良ければご覧あれ。

私はそんなに安部公房に詳しい訳では無いけれど、いくつか観劇したり戯曲・小説を読んだり数少ない安部公房体験はしている中で、

これこそが安部公房の世界観!って宣言されたような舞台で、とにかくずっと楽しくてわくわくして物語の展開に胸が苦しくなり笑い泣き、あっという間の3時間だった。

 

バケモノ・八嶋智人はじめ演者さん達が割とアドリブ多めに遊びまくってるのも楽しくて、

時代設定とかあんまり気にしなくてええんやなと気楽にワクワクしながら楽しんだ。

いやほんと八嶋智人ってすごい役者さんですね。

3時間本編終わったあとのカテコでもまだまだ絶好調で「ワー喉開いてんなあ」と思った。

直後に「まだ声出てます」って神ちゃんが突っ込んでたのも笑った。

 

以下、ダラダラと続きます。

 

【深川さんと神山さんのこと】

神ちゃん(深川)の事を。

汚らしい格好なのに誰にも汚されていないような無垢さと可愛らしさ、年齢よりもうんと幼い印象で。

 

やっぱり身体の使い方がとっても上手くて動きが素直、手振りがとっても雄弁で美しい。ずっと見とれていました。

彼が幽霊を見る時の心の底から愛おしいというような表情、幽霊の言うことは絶対と信じきった目、

その割に幽霊とのバックボーンが謎な感じが深川のピュアさと重なると一気に危うく感じて、

ずっとずっと幽霊はここにいることを信じきれない気持ちだった。

 

後半はどんどんと幽霊に乗っ取られているような姿、苦しんでいる姿に私まで苦しくて居たたまれない思いで見つめていた。

間に挟まれる面白シーンも苦々しく感じるほど。

 

結局おかしくなってしまったのは深川の方だったけれど最初に感じた「無垢」な深川のイメージ通りの狂い方だったな。

優しいからこそ狂ってしまったのか。

幽霊から解放された深川の顔を見て私まで心底ホッとした。

 

【演出のこと】

私は安部公房の「寓話感」「デストピア臭」がとっても好きなのだけど、本作も、埃の匂いのする寓話という感じで本当に好きだった。

コロスの演出、度々登場する雨傘やアコーディオンの音色、

勝手なイメージだけどイメージの中の安部公房って感じでそうそうコレコレ待ってました!ってウキウキした。

電柱・生きている人間・死んでいる人間・街の雑踏や世相、いろんなものを投影していたコロス、

中でも一番好きだったのは深川が幽霊と顔写真とを照合するシーンの歌とダンス。

神山君の圧倒的な歌とダンスもさることながらバックで踊る皆さんの姿がとても好きだった。

自分の顔を見つけられるかもしれないって喜ぶ幽霊たちの姿に見えて、幽霊たちがいとおしく私まで賑やかな気持ちになった。

砂の演出がとにかく好きだった。

粉々になった人骨みたいに見えてゾッとしたり、砂の上でバタバタ走り回ってる演者の姿が滑稽だったり虚しく見えたりした。

形がなくて、触るとサラサラ無くなってしまう砂が幽霊という存在に重なっているようにも

その上で生きている人間たちが幽霊の存在に躍らされているようにも見えた。

 

もうひとつ、電球も良かったなぁ。見ながらあれは何だろうとずっと考えちゃった。

最初は1つだけだったのに気づいたら3、4個と増えその後無数に垂れてきて、ゆらゆらと心許なく揺れる電球が幽霊の目みたいに見えたり

貧しくも暖かく実直な大庭母娘の象徴に見えたり、夜の星に見えたりした。

だけれど後半は全く電球が出てこなくなって、何故かあまり良くない予兆みたいなものを感じ取ったりしてしまった。

話の冒頭から登場したアスピリン、なんだか不吉な感触がずっと手の中にある感じがした。

(話に薬が出てくるとコレ何のメタファーすか?と考えちゃう)

深川が苦しむ間に砂が剥がされてレッドカーペットが出てくるシーン、深川の脳内が剥がれているような感覚になって痛かった。

とても辛くて、とても好きなシーン。

結局どんな世になっても、図々しく小狡賢く不安定な足元でも走り抜けていくような図太さを持った人達が強いのか、と大庭夫妻を見て思った。

幽霊が見えることにした2人、清々しさすらあった。

 

【ラスト】

戦争を想起させるラストだった。

見る人によって、とらえ方が違う終わりだったな。

私には「深川の前から消えた吉田の亡霊(本当の吉田ではないけれど誰からも見えなくなった幽霊のひとり)が

”幽霊たちが戦争の真似事をしているという海の向こう”に渡って行ってしまった」のかなという気持ちになった。

生きていても死んでいても同じことをしているのかな、虚しい。

 

【役者さんたちのこと】

芸達者すぎて贅沢タイムだらけだった八嶋智人さん最高。隙あらば遊びで埋め尽くす人。。

そしてぐんぐんと印象が変わっていく田村たがめさんも流石だった。この夫婦って転んでもタダで起きない顔してるもんね。

この二人が何でもありだから(かどうかは知らんけど)、他の演者さんも皆さん遊びタイムがあってとっても良かったな。

木村了さん演技うまぁぁあああ!

どうして喋っているだけで、動いているだけでこんなに心を掴まれるんだろう。

若いようでおっさんのようで、とっても表情のある声が超いい、台詞回しも完璧…ずっと聞いてたい。

飄々とした身のこなしもとにかく好きだった。

好きです。

ずっとずっと気になる役者さんのひとりだったまりゑさん、ようやく生で演技を観られてめちゃ感動。

動きや表情の作り方が目を引く、ずっと追いかけて見てしまう。好きです。

恋愛レボリューション21の振りとアンミカの真似してませんでしたか??

市長役の伊達暁さんが本当に好き。

コミカル曲者なおじ様役、こんな役やらはるんだ可愛いなあと思いながら目が離せなかった。

であった頃の伊達さんってなんだかもっと鋭利で危ない押井さんって感じだったの。

動きや表情の作り方がとにかく好き。好きです。

 

【最後に】

劇場に向かう道中、緑色のやつぬいを持ったかわいらしいお嬢さんたちの集団に遭遇し、

こんなお嬢さんの年齢で阿部公房の芝居に出会うんだな…と趣深い気持ちになった。

彼女たちの感想を、聞きたいな。

何十年も前の作品がこうして今、作品になること

それを若い人が見るということがとてつもなくエモいなと思った。

何年も前の作品でも今生きている人たちで作り上げるとやっぱり「今」の作品になる。

その窓口になっている神山智洋という人の存在のでかさが尊くて、また更に、神山くんを好きな気持ちが加速したのでした。