7つの光の方へ

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『プロデューサーズ』感想雑記 愛すべき凸凹バディ

プロデューサーズ』@東急シアターオーブ
ハイテンションでみんな○チガイの下品な世界にまんまと引きずり込まれた3時間(幕間込み)!
華々しく不謹慎なトンチキフィクションの中で、マックスとレオ二人の主人公の人間じみた魅力が浮き彫りになって、最後は2人の姿に胸がきゅうんと鳴った。

 

《以下、ネタバレあり》

 


コミカルとセクシーを自由に行き来する男、濵田・マックス・ビアリストック。
ジゴロ系ダメ男なんて俺たちが観たい濵田さん過ぎんか?
濵田さんが無自覚に纏わせてる色気を自覚的に増幅させたようなマックスの立ち居振る舞い、幾度も痺れた。
歌声も、太く艶やかに響かせたりわざと歪ませて軽薄な表情を見せたり変幻自在で、ダンスも…ハイ…好きです…。
愛嬌と掴みどころのなさが同居する濵田マックスに幕が降りる瞬間まで目が離せなかった、1秒たりとも見逃したくなかった。

1幕、どんどん乱れていく前髪良かった、収容シーンでのだらしないシャツも良かった、鳩ダンス(?)の時に捲りあげたズボンからお目見えした靴下・ガーターベルト・膝の骨骨しさに息止まった。
2幕ではマックスに哀愁や孤独感を感じて切なくなった。濵田さん由来のぞわっとするダークなムードがありましたね…。

白状しますと、私も小切手渡すおばあちゃんになりたいです。


神山・レオ・ブルーム、可愛いって200色あんねん!!
一体どの引き出しにその表情とその声とその姿勢しまってた?
神ちゃんがまた一層演技の幅を広げた気がする。神山くん、恐ろしい子
神ちゃんの素地にあるピュアさ・天然物のかわいらしさが活かされながらも、演技・ダンス・歌のスキルをフル発揮して神ちゃんが作り上げたレオ像は、更に魅力的で愛らしい存在だった。
一挙手一投足、どんな表情も1音も全てがレオ、チャーミングでたまらない、お陰様でこちらの母性本能はこれでもかとくすぐられまくり。

抜群の八の字眉毛、守りたい、この八の字眉毛。

ピュアな歌声で歌う「顔♪顔♪」最高に良かった。
神山くんのまっすぐで艶やかで潤いのある歌声で何つう歌詞歌ってんの〜〜!?!?


マックスとレオのやり取りはさすがの一言、互いが自分に無いものを相手に見出し惹かれ、バディになっていく様がとても良かった。
はまかみが凸凹のバディものをやる。あー最高。

特にお気に入りはマックスがレオに振り回されるシーン。
レオに「顔が近い!」とか「顔が怖い!」とか言われてタジタジになるマックス、てんやわんやなりながらレオを宥めるマックス。
ドタバタものは動きが汚かったり雑音が多いとなかなか入り込めないけど、濵田マックスと神山レオの身体捌きの上手さと流石の阿吽の呼吸で、とにかくスムーズに没入出来てシンプルに笑えたし二人の関係値がよく分かる、何より愛おしい!
主役の2人をこんなに愛せるの、濵田さんと神ちゃんがマックスとレオだからに他ならない。

ラスト、二人が声を合わせて歌ったときマックスがレオに「お前、歌上手いんだなあ!」(細かいセリフは違うかも)と感心したように言うんだけど、「みんな知ってるよ」と笑いが漏れると同時にメタを感じてハッとなった。
これまでも2人で歌うシーンは沢山あったのだけど、それは物語の上で歌っていた訳ではなくて、二人の心が通じミュージカルの表現上「歌」となっていたということなのか…!ミュージカルのお約束というやつですね。
それがラストでは実際に2人で声を合わせて歌った、という事に気づいて、じんわり嬉しくなった。

そしてマックスがレオの肩に頭を預けるシルエットが、何だかもうすごく良くて。この2人の姿を見る為に見守って来たのかもって思えるほど。
かけがえのない存在に出会えて良かったねえマックス、レオ……!


主演二人以外に書き留めておきたいことも山ほどある。

なんせ王林ちゃん演じるウーラが最高にセクシーキュートだった!!!
こりゃレオやマックスが骨抜きになるのもうなずける。ダンスも歌声も訛りまじりのカタコトも、魅力的でじたばたしちゃうくらい可愛かった。
「レオ、結婚しないとセックスしてくれないって言うから」ってウーラが言ったあとに会場中に( ᷇࿀ ᷆ )オオンみたいな空気流れたの良かった。

おばあちゃんランドは風邪引いた時に見る夢みたいだった。
みんな可愛いおばあちゃまたち、でも可愛いだけじゃないの本当に最低最低(褒めてる)。
アホみたいなハートの装飾に白目剥いてたのに両脇から巨大ブランコに乗ったおばあちゃんが現れてさすがに仰け反った。
私が見た回はホールドミー・タッチミーが島田歌穂さんver.だったのだけど友近さんver.も見たかったなあ…!

新納さん演じるロジャーと神里さんカルメンのペアは舞台にいるだけでパッと空気が華やぐ。
これが『ゲイ』って事かしら!
新納さんが凄いのは大前提で、カルメンが良かったのがわたし的大発見。立ち姿が美しくてロジャーの事が大好きで仕草がいちいち可愛くて。
手がハケる名(迷?)シーン、じっと双眼鏡でハケる手を見つめてしまった。
ねえ、今、私たち何見させられてる?って観客が戸惑ってそれから段々笑いが広がる時間、ほんと好き。
観客全員で息を呑んで手の退場を見届けるの最高。

ヒトラーの春の女性アンサンブルの皆さんの衣装可愛かったな。
オーロラ輝子みたいな被り物も良かった(伝わる?)(懐かしいね、オーロラ輝子)。


ほぼ前情報なしで臨んだプロデューサーズ、思ってた以上に下品でがはがは笑いながら観たけれど、エッジの効いた笑いが散りばめられながらもマックス・レオ初めとする登場人物がチャーミングで、最後にはきゅんっと満たされた気持ちで劇場を後にした。

何度も書いてしまうけどはまかみが凸凹バディを演じる事の良さをしみじみ感じた。
息が合うってこういうこと、はっちゃめちゃな動きもダンスも歌声もやり取りも本当に素晴らしくて、2人が演じることでより愛らしい2人組になってた。

まだまだ濵田マックスと神山レオのプロデューサーズは上演が続くけれど、2人が無事に素敵なプロデューサーになれることを祈って…。

 

神は細部に宿ってた ~関西七色男大祭り 衣装展示感想雑記

『WESTꓸ10周年記念展 関西七色男大祭り』で見た衣装展示に大興奮してしまった勢いそのままの感想です。

キモ長いので悪しからず。

 

★流星くん
《24から感謝届けます チェック衣装》
流星くんコメント「クリスマスの感じで可愛い」

私もクリスマス感あって好きだよー!
微妙に柄違いの色んな布をツギハギしてる感じ。
ツギハギしてる布の端を処理していないとこもある事に気づいて、にやにや。
内側のプリーツ部分はどうやってくっつけてるんだろう?見せてくれ!
重量感がすごい。ドームで着てもらえるっていう衣装班さんの嬉しさも伝わる。
ビジューやスパンコールがキラキラ!
長四角の金属っぽいビーズが縫い付けられてハードな印象もあってかっこいいな。

★濵田さん
《Mixed Juice EDMコーナー衣装》
濵田さんコメント「過去ツアーの名前を書いて貰った」

ジャケットにビジューや安全ピンがいっぱい刺さってて、服自体はシンプルだけど細かく手作業追加されてる。ラクガキも本当に書いてるんだね!凄!
中のTシャツ 黒のインクが垂れてるようなラクガキの上に黒のスパンコール。光が反射するような仕掛けかな。芸が細かい〜
インナーは重ね着っぽいけど出てる部分だけ縫ってるっぽい。
それにしてもパンツが細いんよ( ; ; )

★神ちゃん
《翔べ関西から OP衣装》
神ちゃんコメント「和洋折衷でかっこいい」

むちゃくちゃ感激する完成度。
まず、地に織りの模様が入ってる生地に模様がプリントされてさらに金のプリントが重ねてある。
しかもその織りも、違う生地をツギハギしてるのか、場所によって模様が違う。むちゃ重そう。

スパンコールやビーズだけじゃなく鋲も付いてるのが神ちゃんぽいな〜。
シャツはマジックテープで開閉するスタイル。

★重岡くん
《Mixed Juice OP衣装》
重岡くんコメント「パンツはストレッチ効いてる」

大小バラバラのスパンコールのジャケット。これはさすがにこういう生地があるんだよね……!?
襟元にある差し色の紫が縫い付けてあるのも良かった。
こちらもシャツはマジックテープ式。
重岡くんがコメントしてたパンツだけど、太ももの内側部分が別布になって立体的な形になってるみたいだった。動きやすさの理由はこれもあるのかな……?

★照史くん
《ラッキィィィィィィィ7 バリハピ衣装》
照史くんコメント「俺の顔まみれ」

布がペラペラだ!若い子が着る布だ!!!年代の違いを感じてエモいぞ!
めちゃくちゃ照史くんの顔プリントされてる。
顔プリントされてない白グレーの布のところは地味に星型の織りがあって可愛い!
腕まくりした形になってる袖ぐりが太くて照史くんを想像して照れ(え?)
動いた時に光の反射があるからこういう織りが入った生地を使うことが多いのかなあ。

★望くん
《WESTV! Drift!!衣装》
望くんコメント「キラキラで上品」

全身スパンコール衣装!
ジャケットはランダムに赤スパンコールが並んでいて、光が乱反射してまばゆい。
一方パンツは黒スパンコールが整列していて細いボーダーみたいな模様になる。
インナーは首元にビーズが縫われてて上品綺麗。
ジャケットの黒い部分はコードを編んだようなものが貼られていてさらにその上からスパンコールが置かれていて本当に芸が細かい( ; ; )
あとパンツ細いねん( ; ; )

★淳太くん
《rainboW 想い、フワリ衣装》
淳太くんコメント「長いシャツが舞うのが好き」

なんだかとっても意外なセレクト、と思ったけどコメント見て納得。
これは上のシャツも下のシャツも既製服のリメイクかな?沢山縫い付けられたポケットがかわいい。右前身頃のポケットにさらに布が縫い付けられてるねんけどそれが手縫いでさ、あー!実際に衣装着てみて「もうちょい色味が欲しい」ってなってあとから縫いつけたのかな?とか妄想しちゃった。
上のシャツは丈が左右で違うし下のシャツはサイドの紐が白に黄緑も混じってて細かく可愛い。
上シャツの前身頃下の方に引っ掻いて「つー」てなった跡を発見してにやにや。
ファッションショー映像で中のシャツに刺繍?があるのを発見。後ろはびっしりスパンコール!もっと見せて……!

《全体感想》
マネキンに衣装が着せられてるだけなのに足の細さや腕の太さ、肩幅の広さなどそれぞれの身体が想像できてグウウてなった。それほど各衣装がメンバーそれぞれの体格やキャラクターに合わせて作られてるって事よね…。
そしてとにかくきらきら!光に反射させるしか勝たん!てな具合に細かいところまできらきらが縫われたり貼られたりしていてときめいたよ〜。

まさに神は細部に宿る。本当に細やかな作り込みが多くて感動した。
メンバーそれぞれのセレクトしたコメントも良くて見応えあったな。
わがまま言えるなら背中側やジャケットの内側まで見たかった…。それくらい360°どこから見られても素敵に作られた衣装なんだなって改めて実感。
でも本当に間近で見られて感無量です( ; ; )ありがとう関西七色男大祭り、ありがとうチームWESTꓸ

大それたロックンロールに殴られて

久しぶりに「大それたロックンロール」を聴いた。
いつも聴いている曲の、よく耳に馴染んだフレーズなのにある時突然鋭く刺さることってありませんか?ありますよね…?

今日は


"君がどんな言葉を信じて
誰と何処で何をしたって
さみしい夜の隙間を狙って
この声でオトしてみたい"

のフレーズに感情がぶんぶん振れた。

 

愛で殴り込んで来てくれてるみたいだな。

 

「そばにいるよ」とか「悲しくなったら思い出して」とかそっと寄り添う優しさとは違う、ちょっと自己中心的で乱暴な愛情表現に胸がギュッと掴まれた。やんちゃさも垣間見えて愛おしい。


淳太くんやWESTꓸを推していると「積極的に愛されている」の感覚になる時が多々ある。
WESTꓸの皆ってファンを、オタクを、愛すべき存在と思ってくれているんだ!嬉しい!の感情と共に溢れる「いいの…?わたしこんなに気持ち悪いのに!?」の思い。
驚くし感謝だし地面に頭めり込むくらいひれ伏したくなる。

 

大それたロックンロールのこのフレーズに、WESTꓸから感じる「推しと自分との積極的な愛の交換」の感情を思い出した。

 

この歌って、
聴いているあなたにロック(という名の愛)で殴り抱きしめに行ってやるよの告白にも、
そんなロックンロールスターになりたい、ロックンロールに対しての愛の告白にも聴こえるな。

 

きっと重岡くんもロックンロールにオトされた経験があるんだろうなあと想像して余計愛しくなっちゃった。

そしてやっぱり私は推しが愛し甲斐のある、可愛がり甲斐のあるオタクでいたいな。改めて思い直す。

真夜中のLIONと爆笑問題太田さんの話と赤ちゃんと、母になった私

かなり昔、ラジオ番組で爆笑問題の太田さんが「コミュニケーション」について話していた。

この内容がとても印象深くて、私は時々思い返す。

曰く、コミュニケーションは発信者だけじゃなくて受け取り側もあって初めてコミュニケーションが成り立つ、というもの。

その中で一番覚えているのが、赤ちゃんは最大の表現者、話すことはできないけれど、泣いたり身体を使って精一杯表現する。お母さんもまた一生懸命赤ちゃんの表現を受け止めて気持ちを察しようとする。

言葉だけじゃなく体全体で発したものを理解しようと努力する事こそがコミュニケーションだ、というもの。

当時私に子供はいなかったけれど、この話がすごく好きでスマホにメモっていたほどだった。

 

このラジオを聞いた数年後、私は母になった。

私のもとに来てくれた赤ちゃんは、まーーー宇宙人。私がいないと死んでしまう、弱くて柔らかくてこれまでの人生で出会った中で最も尊い宇宙人(宇宙人と出会ったことはないけれど)。

伝えたい事はとにかく泣いて伝える彼とべったり数か月過ごすと、不思議と彼の泣き方の違いが分かるようになった。「お腹がすいた泣き」「不機嫌泣き」「おいどこ行ってんねん、はよボクの近くに来い泣き」など。

私は何度も太田さんの話していた「赤ちゃんと母とのコミュニケーション」の話を想った。赤ちゃんと対話することの難しさや尊さを思いだした。

 

そして、子どもがいると一人になれない事を知った。

育休中、とにかく赤ん坊が中心の生活、彼と常に一緒に過ごしていた。

起きているときはもちろん彼が眠っていても息はしているか、吐き戻しの海に溺れていないか気になって常に赤ん坊の事が頭にあった。「一人の時間が欲しいなぁ」といつも思っていたけれど、例えば夫に半日お守をお願いして一人で外出しても、息子の事が気になって即帰宅。

赤ちゃんとは常にコミュニケーションを発信する存在、それを否が応にも受信してしまう私、少なくとも赤ん坊が1歳になるまで私は孤独じゃなかった。孤独になれなかった。

前置きがむちゃ長くなってしまった。

私は真夜中のLIONという歌がとっても好きだ。

都会の喧騒、夜でも煌々としている街の片隅を孤独に歩いている「僕」が、やがて草原を悠然と歩くライオンに変わっていくような歌だ。

「僕」は孤独で、悲しみや苛立ちを誰とも共有できず、夜だけが共鳴してくれているように感じているのだろうか。

そして2番の冒頭にある「泣き止まない赤ん坊」という歌詞に、特に胸がときめくのだ。太田さんの言葉や、私自身の赤ん坊との対話を思い出して、たまらない気持ちになる。

歌の中で、赤ん坊の泣き声は「あんたは一人じゃない」と強く鳴り響くメッセージに感じてしまう。

真夜中のLIONは孤独な歌だけれど、一方で、どうしたって独りにはなれない条理みたいなものを強く感じる。

独りになりたい、誰とも分かち合えない、でも誰かに聞いて欲しい。

孤独になれないからこそ、誰かに伝えようともがいて、あるいは貴方の表現を理解しようともがいて、朝を迎え撃つのかもしれない。

「幽霊はここにいる」感想雑記

「幽霊はここにいる」完走おめでとうございます!

東京・大阪あわせて全34公演無事に終演まで迎えられたこと、本当に素晴らしいことだと思います。

キャストスタッフ関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。

 

私は1/14のソワレ公演に伺って来ました。

とっても面白くて、観劇後直ぐに感想をメモった。

まとめることを放棄した私のダラダラ雑記を良ければご覧あれ。

私はそんなに安部公房に詳しい訳では無いけれど、いくつか観劇したり戯曲・小説を読んだり数少ない安部公房体験はしている中で、

これこそが安部公房の世界観!って宣言されたような舞台で、とにかくずっと楽しくてわくわくして物語の展開に胸が苦しくなり笑い泣き、あっという間の3時間だった。

 

バケモノ・八嶋智人はじめ演者さん達が割とアドリブ多めに遊びまくってるのも楽しくて、

時代設定とかあんまり気にしなくてええんやなと気楽にワクワクしながら楽しんだ。

いやほんと八嶋智人ってすごい役者さんですね。

3時間本編終わったあとのカテコでもまだまだ絶好調で「ワー喉開いてんなあ」と思った。

直後に「まだ声出てます」って神ちゃんが突っ込んでたのも笑った。

 

以下、ダラダラと続きます。

 

【深川さんと神山さんのこと】

神ちゃん(深川)の事を。

汚らしい格好なのに誰にも汚されていないような無垢さと可愛らしさ、年齢よりもうんと幼い印象で。

 

やっぱり身体の使い方がとっても上手くて動きが素直、手振りがとっても雄弁で美しい。ずっと見とれていました。

彼が幽霊を見る時の心の底から愛おしいというような表情、幽霊の言うことは絶対と信じきった目、

その割に幽霊とのバックボーンが謎な感じが深川のピュアさと重なると一気に危うく感じて、

ずっとずっと幽霊はここにいることを信じきれない気持ちだった。

 

後半はどんどんと幽霊に乗っ取られているような姿、苦しんでいる姿に私まで苦しくて居たたまれない思いで見つめていた。

間に挟まれる面白シーンも苦々しく感じるほど。

 

結局おかしくなってしまったのは深川の方だったけれど最初に感じた「無垢」な深川のイメージ通りの狂い方だったな。

優しいからこそ狂ってしまったのか。

幽霊から解放された深川の顔を見て私まで心底ホッとした。

 

【演出のこと】

私は安部公房の「寓話感」「デストピア臭」がとっても好きなのだけど、本作も、埃の匂いのする寓話という感じで本当に好きだった。

コロスの演出、度々登場する雨傘やアコーディオンの音色、

勝手なイメージだけどイメージの中の安部公房って感じでそうそうコレコレ待ってました!ってウキウキした。

電柱・生きている人間・死んでいる人間・街の雑踏や世相、いろんなものを投影していたコロス、

中でも一番好きだったのは深川が幽霊と顔写真とを照合するシーンの歌とダンス。

神山君の圧倒的な歌とダンスもさることながらバックで踊る皆さんの姿がとても好きだった。

自分の顔を見つけられるかもしれないって喜ぶ幽霊たちの姿に見えて、幽霊たちがいとおしく私まで賑やかな気持ちになった。

砂の演出がとにかく好きだった。

粉々になった人骨みたいに見えてゾッとしたり、砂の上でバタバタ走り回ってる演者の姿が滑稽だったり虚しく見えたりした。

形がなくて、触るとサラサラ無くなってしまう砂が幽霊という存在に重なっているようにも

その上で生きている人間たちが幽霊の存在に躍らされているようにも見えた。

 

もうひとつ、電球も良かったなぁ。見ながらあれは何だろうとずっと考えちゃった。

最初は1つだけだったのに気づいたら3、4個と増えその後無数に垂れてきて、ゆらゆらと心許なく揺れる電球が幽霊の目みたいに見えたり

貧しくも暖かく実直な大庭母娘の象徴に見えたり、夜の星に見えたりした。

だけれど後半は全く電球が出てこなくなって、何故かあまり良くない予兆みたいなものを感じ取ったりしてしまった。

話の冒頭から登場したアスピリン、なんだか不吉な感触がずっと手の中にある感じがした。

(話に薬が出てくるとコレ何のメタファーすか?と考えちゃう)

深川が苦しむ間に砂が剥がされてレッドカーペットが出てくるシーン、深川の脳内が剥がれているような感覚になって痛かった。

とても辛くて、とても好きなシーン。

結局どんな世になっても、図々しく小狡賢く不安定な足元でも走り抜けていくような図太さを持った人達が強いのか、と大庭夫妻を見て思った。

幽霊が見えることにした2人、清々しさすらあった。

 

【ラスト】

戦争を想起させるラストだった。

見る人によって、とらえ方が違う終わりだったな。

私には「深川の前から消えた吉田の亡霊(本当の吉田ではないけれど誰からも見えなくなった幽霊のひとり)が

”幽霊たちが戦争の真似事をしているという海の向こう”に渡って行ってしまった」のかなという気持ちになった。

生きていても死んでいても同じことをしているのかな、虚しい。

 

【役者さんたちのこと】

芸達者すぎて贅沢タイムだらけだった八嶋智人さん最高。隙あらば遊びで埋め尽くす人。。

そしてぐんぐんと印象が変わっていく田村たがめさんも流石だった。この夫婦って転んでもタダで起きない顔してるもんね。

この二人が何でもありだから(かどうかは知らんけど)、他の演者さんも皆さん遊びタイムがあってとっても良かったな。

木村了さん演技うまぁぁあああ!

どうして喋っているだけで、動いているだけでこんなに心を掴まれるんだろう。

若いようでおっさんのようで、とっても表情のある声が超いい、台詞回しも完璧…ずっと聞いてたい。

飄々とした身のこなしもとにかく好きだった。

好きです。

ずっとずっと気になる役者さんのひとりだったまりゑさん、ようやく生で演技を観られてめちゃ感動。

動きや表情の作り方が目を引く、ずっと追いかけて見てしまう。好きです。

恋愛レボリューション21の振りとアンミカの真似してませんでしたか??

市長役の伊達暁さんが本当に好き。

コミカル曲者なおじ様役、こんな役やらはるんだ可愛いなあと思いながら目が離せなかった。

であった頃の伊達さんってなんだかもっと鋭利で危ない押井さんって感じだったの。

動きや表情の作り方がとにかく好き。好きです。

 

【最後に】

劇場に向かう道中、緑色のやつぬいを持ったかわいらしいお嬢さんたちの集団に遭遇し、

こんなお嬢さんの年齢で阿部公房の芝居に出会うんだな…と趣深い気持ちになった。

彼女たちの感想を、聞きたいな。

何十年も前の作品がこうして今、作品になること

それを若い人が見るということがとてつもなくエモいなと思った。

何年も前の作品でも今生きている人たちで作り上げるとやっぱり「今」の作品になる。

その窓口になっている神山智洋という人の存在のでかさが尊くて、また更に、神山くんを好きな気持ちが加速したのでした。

WESTくん秋の舞台まつりに思いを馳せて

2021年・秋以降、ジャニーズWESTのメンバーが出演する舞台ラッシュが凄い。検察側の証人、赤シャツ、ハロルドとモード、そしてLUNGS。

LUNGSは今東京公演ですね、観劇される方の反応がとても楽しみでわくわくしています。

この舞台ラッシュを過ごして、そして私も実際に観劇して思ったことが沢山あったので何とか言葉にしたくてこのページを書き殴っている。


私は検察側の証人・赤シャツ・LUNGSを観劇する機会を得たのだけど、初めてジャニーズWESTのメンバーの舞台作品を観て、改めてWESTの力を痛感したし、好きが益々増した。

作品として見応えのある素晴らしい作品なのはもちろん、そんな素敵な作品・素晴らしいカンパニーの中で遜色なく活躍するWESTの面々が凄かった。
想像していたよりもずっとずっと感動してしまった。
作風や規模感、スタイルもバラバラだったけど、どの作品も(私が想像していた)アイドルっぽさが少ないことにも驚いていて。
一流の舞台作品で、そして挑戦的なスタイルだったり作品の質が抜群に高かったり、だから役者としての期待値も要求も高い。

その仕事をきちんと全うしている皆さんの(もはや皆さん、と呼んでしまうな)役者としてのポテンシャルの高さを改めて知って、思い知らされて、本当に恐れ入った。
舞台の上で見る役者としての望さん、照史くん、神ちゃんは輝いていた。
真っ直ぐで誠実な瞳の裏にゾッとする顔を隠していた望さんのレナード。
照史くんの赤シャツ先生はこんなに可笑しくて可愛らしくて色っぽいんだ…と未だにドキドキしてる。
LUNGSの神ちゃんの体当たりで真っ直ぐぶつかってくる演技に震えたし涙が出た。
どの作品も、とても没入して楽しめたと同時に、役者としての彼らを、ああ、こうやって身体を動かすんだ、こんな声を出すんだ、こんな顔をするんだ、こんな風に泣くんだ…と思いながら見ていた。幸せな時間でした。
彼らはアイドルだけど舞台の上では役者だった。

こんなに色々な作品でジャニーズWESTのメンバーそれぞれが役者をしている事、一役者として舞台を全うしている事って当たり前じゃない。
彼らの役者としての素質が信頼されている証拠なのは勿論、何より我々ファンの鑑賞力や解釈する素質が信頼されているということもあるんじゃないかな。
ジャニーズWESTのファンって恐らく広い、めちゃくちゃ若いファンばかりじゃないと思う。色々な環境で生活する人がジャニーズWESTを応援してる。
そんな幅広いファン層だからこそ多様な作品を楽しめると、その力量を託されているんだとしたら、とっても嬉しい事。
(これは演劇作品に限らず、ドラマや映画にも言える事だけれど、それはまた別の話ですね。)


そして、だからこそ、もったいないな〜という気持ちも、ちょっと…すごくある。
WEST始めJの舞台ってほぼJのファンしか観劇しないんじゃないかな??
私の観劇した回数が少ないので他の舞台がどうなのか分からないけれど、Jの方の出演される作品ってなかなかのレアチケットですよね…?
どれだけ演劇的に質の良いものでも、作品に興味のあるJファン以外の方が気軽に見に行けない現状が勿体ないと感じてしまう。
Twitterで「お芝居好きな人が○○の舞台を観に行くとチケットの競争率上がるからチケット取らないで欲しい」と言うような呟きを見て、おおおい、ただ作品に興味があって観たい人だって居るに決まっておろう!!と荒ぶったりもした…。
舞台で推しを見たいと言うのも立派な観劇理由だというのも分かる。(私も好きな俳優さん目当てで舞台観に行くし)
私がこんなにモヤモヤするのって恐らく元々舞台が好きだからなのかな……頭では理解してるつもりだった。
でも、実際に会場に足を運ぶと客層がやっぱりJのファンばかりに見えて正直衝撃を受けてしまったし、(感じないようにしたかったけど)普通のお芝居とアイドルの出演してるお芝居ってやっぱり違うのかな…と感じてしまったのも事実。
勿論チケット即完なら興行としては大成功なんだろうけど、普通の演劇ファンの方に門戸が開かれていないのってやっぱりもったいない。さみしい。


そして、どれもめちゃくちゃ面白くて共演されてる俳優さんたちの演技も素晴らしいし何よりその中で演技してるWESTのメンバーの姿が眩しくて、そんな贅沢な時間なのに「自担を生で見れた!会えた!」と言う言葉だけを残している方をお見かけすると、きっともっと何か感じたことはあったはず、と思ってしまうこともあり。

……いや、もちろん観た人が個々に感想を持つのは自由だし感想警察をするつもりはないし(なんだよ感想警察って)、私が目にするSNSでの書き込みなんてほんの一部分なのも分かってるけど。モヤモヤしてる自分がいる。
 

その代わりとても嬉しい発見もあった。
敬愛して止まないフォロワーさん達がお芝居を観て素晴らしい感想や考察を文章にしてくださった事。
特にLUNGSはフォロワーさんに限らず本当に読み応えある考察に沢山出会えて感動した。
私はジャニーズWESTを好きになって初めてヲタ垢というものを作ったのだけど、ここで出会うジャス民各位のセンス、語彙力の高さ、考察力の凄さを目の当たりにして心底驚いたし大好きになった。
その熱量が演劇作品に向いた時、とてつもない語彙力で作品が語られるのがなんかもう凄く嬉しいし面白いし、その出会いに感激してる。
信頼のおける感受性やセンスの持ち主であるジャス民の皆様が作品を観るとこんなに様々に議論されるのか、雄弁に語られるのか、とただただ感嘆した。

いいぞもっとやれもっとくれ、もっと見たい。


私はただのイチ演劇ファン(しかも全然浅いし偏ったファン)で、ジャス民歴も短いし私が何かしら言うのはおこがましいって事は百も千も承知だ。
でも、願わくば、舞台を観劇したら「自担に会えた嬉しさ」ともうひとつでも何か得て帰っていたら嬉しいし、この舞台ラッシュをきっかけに観劇されたジャス民さんが「舞台って面白い」って感じていたら嬉しい。

どんどん舞台に出会って欲しいし感想を聞きたいし何を感じたか何を思ったか知りたい。
だってその日その時その会場でしか体験できない事をして来たんだ、羨ましい!
そしてそして非Jヲタの演劇ファンの人達にもJ舞台の門戸が開けばいいな〜とも思う。

私もジャス民になる前にJの方の舞台に出会っていたかったもん。

そしてそして、ジャニーズWESTの皆さんには是非ともこれからもたくさんの素敵な舞台作品に携わって欲しいし、私も素敵な作品にどんどん出会いたい。

 

んー、やっぱりおこがましいかな。

 

LUNGSを観ながらいつかの私を見ていた②

こちらの記事の続き

https://e-ju-yel.hatenablog.com/entry/2021/11/10/130211

🫁

2人のキャストについても書き留めておきたいな。
奥村さんの演じるW、とっても理知的でチャーミングでした。あんなに華奢な体のどこから?と言うくらいパワーが溢れていた。
Wの魅力がすごく伝わる演じ方だなぁと感じた。
 
そして神ちゃん。
実は、神ちゃんはもっと作りこんで演技をするのかなと勝手に思っていて。
しかもこの作品は翻訳劇だし舞台も海外のままなので、セリフの言い回しとか身振りも海外の人に近い。
だけど、思った以上に生々しくて、もっと根幹で演じてる!とびっくりした。神ちゃんの持つキャラクターとMの少しあどけなくて誠実なんだけどちょっと頼りない人間性がマッチしていて見事だった。

すごく魅力的でした。
-----
最後に。
観ながら私も色々な事を考えました。
気持ちがあちこちに飛んで、かつての気持ちを思い出したりした。
観た後に誰かと話したくなる作品だったし、
観劇した人の感想やレポをこんなに楽しめる作品に出会えた事が嬉しいです。


神山くん、奥村さん、そしてスタッフの皆さん、大阪公演お疲れ様でした。
東京公演も応援しています。